【何歳まで働ける?】定年後の選択肢とメリットデメリットを解説

公開:2024/12/30 更新:2024/12/30
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65歳までの雇用が法律で保障され、70歳までの就業機会も広がってきました。実際に60歳以降も多くの方が就労を希望しており、何歳まで働けるのかも気になるところです。


この記事では、これからも働き続けたいシニア世代の皆さんに向けて、定年後の働き方の選択肢や働く際の注意点、必要な準備を分かりやすく解説します。長く働くことのメリット、デメリットを理解し、ご自身に合った働き方を見つけていきましょう。

シニア世代の多くは「65歳くらいまで」働きたいと考えている


現代の日本では、多くのシニア世代が定年後も働き続けることを希望しています。内閣府は令和2年版高齢社会白書で、60歳以上の方々に就労希望年齢を調査しました。


「何歳ごろまで収入をともなう仕事をしたいか(したかったか)」という質問では、「65歳くらいまで」が25.6%と最多でした。続いて「70歳くらいまで」が21.7%、「働けるうちはいつまでも」が20.6%と続いています。


これらの数字を合計すると、60%以上のシニアが65歳以降も働く意欲を持っていることが分かります。



こうしたニーズに応える形で、近年では企業側の受け入れ体制も整ってきました。65歳までの雇用確保が法律で義務付けられ、さらに70歳までの就業機会の確保も広がっています。

高齢者を雇用する場合のルール


日本では、高齢者の雇用を安定させるため、企業が守るべきルールが定められています。おもなルールとして「65歳までの雇用機会の確保」「70歳までの就業機会の確保」があり、さらにパートタイム労働者に関する規定も設けられています。それぞれの内容を詳しくみていきましょう。

65歳までの雇用機会の確保


現在、高年齢者雇用安定法では、定年は60歳以上でなければならないと定められています。企業は、定年を65歳未満で定めている場合、従業員が65歳まで働ける仕組みを必ず用意しなければなりません。

具体的には、以下の3つのうちいずれかを実施する必要があります。
  • 65歳までの定年の引き上げ
  • 65歳までの継続雇用制度の導入
  • 定年の廃止
継続雇用制度は、希望者全員を対象とすることが義務付けられています。なお、継続雇用先については、自社だけでなく関連会社での雇用も認められています。(例:A社の従業員をグループ会社のB社で再雇用するなど)

70歳までの就業機会の確保


2021年4月から、企業には従業員が70歳まで働ける機会を確保するよう努力する義務が課されました。この制度は、65歳以上70歳未満の定年を設定している企業や、70歳以上の雇用を含まない継続雇用制度を導入している企業に適用されます。

該当する企業は以下の5つの措置のいずれかを講じる努力義務が課されています。

  1. 定年年齢を70歳まで引き上げる
  2. 70歳までの継続雇用制度を導入する(グループ会社での再雇用も可能)
  3. 定年制を廃止する
  4. 70歳までの業務委託契約を結ぶ制度を設ける
  5. 社会貢献事業に従事できる制度を導入する(地域活動や環境保護活動など)

なお、4番目の業務委託契約や5番目の社会貢献事業を選ぶ場合は、労働者の過半数を代表する者の同意が必要です。


このように、シニア世代の多様な働き方を支援する仕組みが整えられています。

パートタイムの定年制度

パートタイムの定年制度については、以下のようなルールがあります。


【就業規則に定年の定めがある場合】

パートタイマー専用の就業規則で「定年は65歳」などと明記されている場合は、その年齢が定年です。


【就業規則に定年の定めがない場合】

パートタイマー用の就業規則がない場合は、基本的に正社員の就業規則が適用されます。


また、高齢者が離職する際には、企業に以下の義務が課されています。

  • 本人が希望する場合は、再就職支援を行う(努力義務)
  • 1ヶ月以内に5人以上の高齢者が解雇などで離職する場合は、多数離職届を提出する

これらの制度により、シニア世代の継続的な就労や、万が一の離職でも安心できる制度が確保されています。

60歳以降の働き方・雇用形態


60歳以降も働き続けるための選択肢は、大きく分けて3つあります。

  • 継続雇用制度を利用する
  • パートタイム、アルバイトとして働く
  • 個人事業主、フリーランスとして働く
それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。

継続雇用制度を利用する


継続雇用制度とは、定年後も働きたい方の希望に応じて雇用を延長する制度です。継続雇用制度には、勤務延長制度と再雇用制度の2種類があります。

一つ目が勤務延長制度です。定年後も退職せず、雇用契約を延長する制度です。定年前と同じ役職、給与、業務内容で働き続けられます。なお、退職金は延長終了時に支払われます。

勤務延長制度のメリットは、慣れた環境でキャリアを活かし、スムーズに仕事を続けられることです。

二つ目が再雇用制度で定年時に一度退職し、再度同じ会社で雇用契約を結ぶ制度です。多くの場合、契約社員や嘱託社員として雇用され、それにともなって給与水準も下がるのが一般的といえます。ただし、勤務日数や時間など労働条件を柔軟に設定できるため、自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能です。

なお、継続雇用制度は企業によって詳細や上限年齢が異なります。定年後も勤務を続けたい場合は、ご自身の会社の制度をあらかじめ確認しておきましょう。

パート・アルバイトで働く


パートタイムは、正社員よりも短い所定労働時間で働く形態です。給与は一般的に時給制で、働いた時間に応じて支払われます。パート勤務はシニア世代にとって以下のようなメリットがあります。

  • 70歳以上の求人も多く、仕事が探しやすい
  • 一定期間ごとに契約を更新する形が多く、定年制度が適用されないケースが多い
  • 週2回など、自分の体調やライフスタイルに合わせた働き方が選べる
  • 正社員と比べて責任が軽く、負担が少ない
  • 未経験でも始めやすい職場が多い
注意点は、パートタイムで働く場合、企業によって年齢制限が異なる点です。応募前に、何歳まで働けるのかを必ず確認しましょう。また、雇用保険や社会保険の適用条件も確認しておくと安心です。

個人事業主・フリーランスとして働く


個人事業主とは法人を設立せずに個人で事業を行う方のことで、税務署に開業届を提出すれば始められます。またフリーランスは、企業と雇用契約を結ばずに、一つの仕事ごとに契約を結び、業務の成果に対して報酬を受け取る働き方です。

この働き方の特徴は、企業との雇用契約がないため年齢制限がないことです。自分のペースで仕事を続けられるため、何歳まででも働けます。また、働き方や収入のコントロールがしやすく、士業などの専門職はこれまでのキャリアを存分に活かせるでしょう。趣味を仕事にすることも可能で、自由度の高い働き方といえます。

60歳以降の働き方については、こちらの記事で詳しく解説しています。


高齢者に向いている職種おすすめ3選


シニア世代が活躍できるおすすめの職種は以下の3つです。

  • マンション管理士
  • 警備員
  • コールセンター

それぞれの仕事内容や特徴を紹介します。

マンション管理士

マンション管理士の仕事は、居住者が安全で快適に暮らせる環境を維持することです。おもな業務は以下の通りです。

  • 居住者や来客者の受付対応
  • 共用スペースの点検(照明・郵便受け・植栽など)
  • 簡単な修繕や業者対応
  • 廊下・階段・エントランス・ゴミ置き場など共用部分の清掃
  • 管理組合の補助
比較的体力仕事が少ないため高齢者に人気があります。また、正社員やパートのほか、業務委託で雇用する企業もあるため、定年を気にせずに長く働きやすい職種です。

警備員

警備員の仕事は、おもに2種類あります。

種類 おもな仕事内容
施設警備 施設内を巡回し、安全を確認する
出入口で不審者や不審物を確認する
交通誘導

駐車場や工事現場で車や人の誘導を行い、トラブルを防ぐ

シニア層が多い職種で、特別なスキルがなくても採用されやすいのが特徴です。ただし、屋外での立ち仕事が多いため、体力を考慮して勤務条件を選ぶことが大切です。

コールセンター

コールセンターの仕事は、座り仕事を希望するシニアにおすすめの職種です。電話を使って顧客対応を行う業務が中心です。

【おもな業務】
  • 顧客からの問い合わせや相談の受付
  • 企業から顧客への連絡業務

コールセンターは求人数が多く、短時間勤務からフルタイムまで柔軟な働き方が選べるのが特徴です。人生経験を活かせる仕事で、顧客の要望を理解する力が求められます。また、座り仕事で身体への負担が少ないため、シニア層に向いている職種です。


身体の負担が少ない仕事をお探しの方にはこちらの記事が役に立ちます。


長く働くことのメリットとデメリット


シニア世代が長く働き続けることには、収入面だけでなく、健康や生きがいなど、さまざまな側面でメリット・デメリットがあります。ここでは、実際に働き続ける際に知っておくべきポイントを解説します。

【メリット】収入アップと心身の健康増進

働き続けることで得られるメリットは、おもに経済面と健康面があげられます。

【収入面のメリット】
  • 収入が増える
  • 厚生年金加入や、年金の繰下げ受給で年金受給額が増える
  • 条件を満たせば高年齢雇用継続給付金が受け取れる

高年齢雇用継続給付金は、60歳以上65歳未満の方が、60歳時点と比べて給与が25%以上下がった場合、給与の最大15%が給付金として支給される制度です。ただし、雇用保険に5年以上加入していることが条件です。

【健康面のメリット】
  • 体力や筋力の低下を抑えられる
  • 脳の活性化により、認知機能の低下を防げる
  • 社会参加の実感が生まれ、生きがいを感じられる
  • 人との交流により孤独感が軽減される

特に健康面では、予想以上にメリットを感じる方が多いようです。

【デメリット】年金受給額が減ってしまうケースも


長く働くことにはいくつかのデメリットもあります。

【収入面のデメリット】
  • 再雇用などで雇用形態が変わり、給与が下がる可能性がある
  • 年金受給額が減る可能性がある

給与と年金の合計が月48万円を超えると、年金が一部または全額減額される場合があります。

【身体面のデメリット】
  • 年齢とともに体力が低下し、働くことが辛くなる場合がある
  • 業務のデジタル化に追いつけずストレスを感じることがある

このようなメリット・デメリットを踏まえたうえで、ご自身に合わせた働き方を選びましょう。

働きながら老後に備えるための対策


長く働き続けるためには、計画的な準備が大切です。また、年金だけでなく資産形成も含めた老後資金の準備も同時に進めていきましょう。具体的な対策は下記の3つです。

  • 健康管理を心がける
  • スキル、資格を習得する
  • NISAやiDeCoを利用する
それぞれ解説します。

健康管理を心がける


シニア世代が働き続けるには、健康管理が最優先です。以下のポイントを日々の生活に取り入れましょう。

  • 病気の早期発見や予防のために健康診断を受ける
  • インフルエンザや肺炎球菌ワクチンなど、年齢に応じた予防接種を受ける
  • 栄養バランスの取れた食事を摂る
  • 適度な運動で筋力や体力を保ち、体調を良好に保つ
いつまでも元気に働き続けるためには、健康的な生活習慣と、病気の予防、早期発見が大切です。

スキル・資格を習得する


年齢を重ねても働き続ける際には、専門的なスキルや資格が大きな強みです。時代の変化に対応できる知識や技術を持っていると企業からより必要とされる人材になれるでしょう。おすすめのスキル、資格を紹介します。

  • ITスキル:基本的なパソコン操作やデジタルツールの使い方
  • 語学力:英会話や観光案内に活かせる外国語
  • 介護の基礎知識:介護の現場で役立つ基本的なケアの方法
経験がない職種でも、資格を持っていれば前向きな姿勢をアピールでき、新しい仕事にチャレンジしやすくなります。ハローワークの教育訓練給付制度を利用すると、受講費の一部または全額の支援を受けられますので活用するのもよいでしょう。

シニア世代におすすめの仕事や仕事探しに有利な資格については、こちらの記事で詳しく解説しています。


NISAやiDeCoを利用する


働きながら老後資金作りを始めることも大切です。

【老後資金作りのポイント】
  • 長く働いて安定した収入を得る
  • 効率的な制度を利用して資産形成する

より積極的な資産形成を考えている方には、つみたてNISAやiDeCoがおすすめです。これらの制度は税制優遇があり、効率的な資産形成が可能です。特につみたてNISAは、投資信託などに定期的に積立投資を行うことで普通預金よりも高い運用収益が期待できます。

例えば毎月2万円を年利3%で15年間積み立てた場合、総額約440万円(元本360万円、運用収益約80万円)となり、運用益は非課税です。

ただし、投資には元本割れのリスクがともないますので、十分な理解と慎重な判断が必要です。金融庁のホームページでは、資産形成シミュレーターを利用できますので、実際の運用を始める前の参考にしてください。


まとめ


シニア世代が定年後も働き続ける際のポイントは以下の通りです。

  • 65歳までの雇用確保が義務化され、70歳までの就業機会も拡大中
  • 継続雇用制度やパートタイマー、フリーランスなど、多様な働き方が可能
  • 収入アップや健康増進などのメリットがある一方、体力面やデジタル化への対応など考慮すべき点もあり
  • 60歳からの働き方を考えることは、自分の人生を見つめ直すよいきっかけです。シニア専門求人【PR市場】では、さまざまな職種や働き方の情報が掲載されており、いつでも気軽に閲覧できます。実際の求人情報を見ると、ご自身に合った働き方が具体的にイメージできるようになるでしょう。ぜひ参考にしてください。


    【Q&A】

    Q.70代で働いている方はどれくらいいますか?

    A.内閣府の統計によると、2023年の70〜74歳の就業率は33.9%、75歳以上は11.0%です。この数字は平成27年以降上昇傾向となっており、高齢者の就労率は年々増加しています。


    Q.70歳以上のパート、アルバイトの時給はどれくらいですか?

    A.総務省の統計(令和3年)によると、70歳以上のパート・アルバイト労働者の時給は、全体平均で1,383円です。内訳は男性が1,533円、女性は1,260円です。


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