定年退職前にやっておくこととは?必要な手続きの方法について解説

公開:2024/04/30 更新:2024/04/30
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定年退職前にやっておくことは多岐にわたるため、仕事やプライベートに忙しく、つい後回しになってしまうことも多いでしょう。しかし、手続きは早めにしておかないと、あとで間に合わなくなってしまうものもあります。

そこでこの記事では、
定年退職前に必要な手続きのほか、会社での過ごし方や普段の生活で気をつけるべきことなどについて解説します。定年退職後に後悔しないためにやっておくべきことをお伝えしますので、ぜひお読みください。

定年退職前にやっておくこと


定年退職前には、公的年金や健康保険、雇用保険などの手続きが必要です。在職期間中はこれらの手続きのほとんどを会社が代わりに行っていましたが、退職の段階では自分で行う必要が出てきます。

事前の準備が必要になるものもあるため、あらかじめ手順や用意するべきものを知っておくことが大切です。やるべきことが多いと混乱しがちですが、焦らずに一つずつ着実にこなしていくとよいでしょう。

以下で、それぞれの手続き方法について詳しく解説します。

公的年金

公的年金は、原則として65歳から受給できます。年金を受け取るためには「年金請求書」が届いてから、年金事務所などで手続きを行う必要があります。年金請求書は「年金の受給権が発生する年の誕生月の約3ヶ月前」に日本年金機構や共済組合などから送られてくるので、時期が近づいたら注意しておくとよいでしょう。

年金請求書が届いたら、印字されている内容を確認し、必要な添付書類を年金事務所などに提出する準備をします。勤めている会社に年金手帳を預けている場合は、退職に合わせて返却してもらいましょう。

必要な添付書類をそろえたのちに年金事務所などで年金の請求手続きをすると「年金振込通知書」が届き、初回分の年金支払が行われます。

初回の支払以降に届く「公的年金等の源泉徴収票」は確定申告時に添付する書類ですので失くさないように保管しておきましょう。

健康保険

定年退職後の健康保険には、以下の選択肢があります。

  • 国民健康保険に入る
  • 退職前の健康保険の任意継続をする
  • 家族の保険の扶養に入る

手続きを始める前に、まずは自分がどれを選ぶのかをよく検討しておきましょう。


国民健康保険に加入する場合は、今まで加入していた健康保険の「資格喪失証明書」を会社から受け取ります。そのあと各市区町村の窓口にある「国民健康保険被保険者資格届」と併せて退職後14日以内に手続きをします。


退職前の健康保険の任意継続者になるためには、以下の条件が必要です。

  • 資格喪失日の前日(退職日)まで継続して2ヶ月以上の被保険者期間があること
  • 資格喪失日から20日以内に、「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すること

手続き先は加入していた健康保険によって異なるため、事前によく確認しておきましょう。


また、家族の健康保険の被扶養者になる場合、家族が勤務する会社の健康保険組合などで手続きをします。しかし、60歳以上の場合は年収180万円未満であることが条件となるため注意が必要です。

雇用保険の失業給付

定年退職後に再就職が決まらなかった場合、雇用保険で失業給付を受給できることがあります。

失業給付を受給するためにはまず、退職時に会社から受け取った「離職票」と「雇用保険受給資格者証」を住所地のハローワークに提出し、求職の申込みをします。その後、原則として4週間に1度ハローワークで失業の認定を受けることで、失業給付の受給が可能です。

失業給付の基本手当の金額は退職前6ヶ月間の賃金(賞与を除く)を元に算出するため、定年退職前には給与明細を保管しておくと給付額の試算に役立つでしょう。

また、あらかじめ離職票の受領方法を会社に確認しておくとスムーズです。

退職金の受け取りにも手続きが必要

退職金を受け取る場合、確定申告が必要になる場合もあります。ただ、会社が用意してくれる「退職所得の受給に関する申告書」を記入・提出すれば、会社で所得税や復興特別所得税・住民税を計算し、源泉徴収を行ってくれます。この手続きをすると確定申告が不要になるため、定年退職前には忘れずに提出するようにしましょう。

もし提出できなくても、個人で確定申告を行えば大丈夫です。その際は「公的年金等の源泉徴収票」を確定申告時に添付します。

退職金の受け取り方には、一時金や年金などがあり、会社によって異なります。一時金で受け取る場合は、退職所得として退職所得控除の対象です。一括でまとまった金額を受け取れるため、それを元手とした資産運用などもしやすいでしょう。

年金で受け取る場合は、雑所得に該当するため公的年金等控除の対象です。一定額を定期的に受け取れるため、安定した生活ができる点がメリットです。

定年退職前に併せて考えておきたいこと


先述した手続きのほかにも、定年退職前にあらかじめ考えておきたいことはいくつかあります。それぞれのポイントについて解説します。

住宅ローン・生命保険

定年退職前は、現在支払っている住宅ローンや加入している生命保険の見直しを考えるのに、ちょうどいいタイミングです。住宅ローンの返済がまだ終わっていない場合は、退職の時点であとどれくらい返済する必要があるのかを確認しておくとよいでしょう。退職金で完済する方法もありますが、老後の資金が足りなくなるなど金銭面のリスクは大きいです。


また、会社の生命保険に加入している場合は、定年退職後も継続して加入ができるのかなど確認が必要です。退職後に必要な保障を検討したうえで、無駄のない内容に切り替えてもよいでしょう。

再就職・再雇用

ゆとりある定年退職後の生活のためには、ある程度のお金が必要です。定年退職後も働き続けるのか、働くなら再就職をするのか、元の会社に再雇用してもらうのかなど、退職前によく考えておくと将来の見通しも立てやすくなるでしょう。

再就職・再雇用で働いたとしても、定年退職前よりも収入はダウンする可能性が高いので、定年後の生活費を得る方法を検討しておくと安心して退職を迎えられます。働くことで、人生の充実度も上がるでしょう。

定年退職前に会社で気をつけるべきこと


定年退職前は、会社内での手続きや身の回りの整理なども必要です。細かく忘れがちですが、退職前に少しずつ準備を進めておくのがよいでしょう。

受け取るものや返却するものを確認する

年金手帳や資格喪失証明書など、定年退職後にあたって会社から受け取らなければならない書類がないかあらかじめ確認しておきましょう。併せて「退職所得の受給に関する申告書」など、会社に提出するべきものは忘れずに出しておきます。

業務で使用していたパソコンなど、会社から貸与されているものがあれば返却できるよう準備しておきましょう。不要なデータを消す場合は、必要なデータも誤って消さないよう注意が必要です。

また健康保険証も返却することになるため、返却前にコピーをとっておくようにしましょう。

デスクやロッカーなどの整理をする


定年退職前には、これまで会社で使っていたデスクの引き出しやロッカーの中などを整理しましょう。きれいに掃除をしておくと次に使う方にも喜ばれます。

物品を自宅へ持ち帰ったりまとめてゴミに出したりといった作業は、一度にやろうとすると間に合わなくなる可能性が高いため、あらかじめこまめに進めておきましょう。

業務の引き継ぎ忘れがないか確認する

担当していた業務をほかの方に引き継ぐ場合は、必要事項をきちんと伝えたかどうか確認しておきましょう。関わっていた仕事相手の連絡先や名前なども伝えておくと、後任者が業務を引き継いだあともスムーズに進められます。わかりやすいマニュアルなどを作っておくのもよいでしょう。

関係者への挨拶回りをする

お世話になった関係者へ直接退職の挨拶回りをしたり、挨拶メールを送ったりしておくのも大事です。社外の方へは最終出勤日の2〜3週間前、社内の方へは最終出勤日の挨拶が一般的とされています。ただ、時期については在籍している組織の慣例もあるため、それらを踏まえて判断しましょう。

定年退職前の生活で気をつけるべきこと


定年退職前は、会社内だけでなく普段の生活でも退職後の生活を見据えた準備をしておくことが大切です。それぞれのポイントについて解説します。

健康面に気を配る

定年退職をすると、自宅にいる時間が長くなり、筋力や体力の落ちてしまう方が多くいます。日々のやりがいを失うことで、認知機能の低下がみられることもあります。


定年退職前から定期的に運動の習慣をつけたり、没頭できる趣味を見つけたりして、心身ともに健康でいられるよう気を配っておくことが大切です。

定年退職後にどれくらいお金がかかるのか考える

厚生労働省の「医療保険に関する基礎資料」(R3年)によると、生涯でかかる医療費は2,800万円で、そのうち49%が70歳以上でかかるとされています。


また、急な病気や怪我で介護サービスを受けることになった場合は、その分お金もかかってくるでしょう。定年退職後はどのようなお金がどれくらい必要になるのか、先を見通しておくことで将来の不安を軽くすることができます。安定した生活を送るために、再就職や投資など、収入を得る手段を考えておくのも一つの手です。

再就職などに向けて学び直しをする

再雇用や再就職・独立を検討している場合は、定年退職前から新たな知識を学んでおくとよいでしょう。IT・介護・語学など、知識をつけることでセカンドキャリアを築きやすくなるだけでなく、学ぶことが脳の活性化ややりがいにもつながります。

まとめ


定年退職前は健康保険や年金関係の手続きのほか、会社での引き継ぎなどやるべきことが数多くあります。もれなく準備できるよう、余裕を持って取り掛かるとよいでしょう。


再就職を考える場合も、次の職探しは早めに動いておくのがベターです。シニア専門求人「PR市場」なら、さまざまな検索条件から定年退職後の方でも働きやすい仕事を探せます。


【Q&A】

Q1.定年退職後の安定した生活のために、定年退職前にできることは?

A1:日々の生活費のほか、住宅ローンや生命保険など、何にどれくらいお金を使っているのか確認しておきましょう。あらかじめお金の使い道を把握しておくことで、定年退職後のお金のやりくりがしやすいです。金銭面の不安がある場合は、再就職や再雇用を検討する・定年退職前から投資信託やNISAを始めておくなど、お金を得る手段をできるだけ多く持っておくのも一つの手です。


Q2.定年退職前に会社から受け取るべき書類は?

A2:雇用保険被保険者証や年金手帳を会社で保管してもらっている場合、退職前に受け取る必要があります。ほかにも雇用保険被保険者離職票や健康保険資格喪失証明書、源泉徴収票などが各種手続きに必要になるため、忘れずに受け取っておきましょう。

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