特別支給の老齢厚生年金をもらえない方が満たすべき条件とは?
公開:2025/02/27 更新:2025/02/27
本記事を読んでいる方のなかには「特別支給の老齢厚生年金がもらえない」と悩んでいる方も多いでしょう。 特別支給年金は、決められた条件を満たせば受け取れます。ただ、具体的にどの条件を満たせば特別支給年金を受け取れるかを把握しておかなければ、年金を受給すべきか判断できません。
この記事では、特別支給年金をもらえない方の条件や注意点を解説します。本記事を読めば、特別支給年金を受給できるかが判断しやすくなるでしょう。特別支給の老齢厚生年金の受け取り方を理解し、年金を受け取るための行動を心がけてください。
特別支給の老齢厚生年金とは?
特別支給の老齢厚生年金とは、一定の条件を満たした60歳から64歳の方が受け取れる年金です。生年月日や性別ごとに受給開始年齢が決められており、65歳になると受け取りが終了します。
受給開始は60歳でしたが、1985年の法改正によって受給開始年齢が65歳に段階的に引き揚げられるようになりました。
また特別支給年金で受け取れる金額は、報酬比例部分と定額部分、加給年金額です。加給年金額とは、特別支給年金の受け取り予定の方で配偶者や子どもがいる場合に加算される制度です。報酬比例部分は過去の報酬や年金の加入期間、定額部分は年金の加入期間によって金額が決定します。
なお、在職中の方は報酬の金額によって受給停止になる恐れがあるため注意が必要です。
65歳からの老齢厚生年金の違い
特別支給年金と65歳から支給される年金は、目的と計算方法が違います。特別支給年金は、現役世代の影響を軽減する目的で設けられています。
一方で65歳から支給される年金は定年退職後に受け取る年金で、すべての受給者に共通する制度です。また特別支給年金は、報酬比例部分が請求されません。しかし、65歳以上は報酬比例部分が請求されます。
特別支給年金は、65歳からの年金と違って必ず受け取れるわけではありません。特別支給年金と65歳からの年金の違いを把握し、意味を混同しないように気をつけましょう。
特別支給の老齢厚生年金がもらえない方の条件
どのような条件を満たしたら、特別支給年金が受給できるのでしょうか。特別支給の老齢厚生年金を受給するためには、以下の5つの条件を満たす必要があります。
- 【男性】昭和36年4月1日以前に生まれた
- 【女性】昭和41年4月1日以前に生まれた
- 厚生年金保険等に1年以上加入していた
- 老齢厚生年金の受給資格期間(10年)がある
- 受給開始年齢に達している
上記の条件を参考にし、特別支給年金を受給できるかを確認してください。ここでは、特別支給年金の受給開始年齢と計算方法を紹介します。それぞれの項目を参考にし、自分が年金をどれくらい受給できるのかを確認しましょう。
受給開始年齢
特別支給の老齢厚生年金の2025年時点の受給開始年齢は、以下のとおりです。
性別 | 生年月日 | 受給開始年齢 |
---|---|---|
男性 | 昭和32年4月2日〜昭和34年4月1日 | 63歳 |
男性 | 昭和34年4月2日〜昭和36年4月1日まで | 64歳 |
女性 | 昭和33年4月2日〜昭和35年4月1日まで | 61歳 |
女性 | 昭和35年4月2日〜昭和37年4月1日まで | 62歳 |
女性 | 昭和37年4月2日〜昭和39年4月1日 | 63歳 |
女性 | 昭和39年4月2日〜昭和41年4月1日まで | 64歳 |
また上記の表の受給開始条件に当てはまらない方だとしても、以下のいずれかに該当すれば特別支給の老齢厚生年金の受給ができます。
- 厚生年金保険の被保険者期間が44年以上の方
- 会社を退職しているときに障がいの状態だと申し出た方
- 厚生年金の被保険者期間に抗内員もしくは船員だった期間が15年以上ある方
なお、特別支給年金の受給開始年齢を確認するときは、以下の2つのポイントを確認してください。
- 対象者の生年月日を2年ずつ区分して受給開始年齢を1歳ずつ引き上げる
- 女性の引き上げは男性よりも5年間遅い
それぞれのポイントを確認しつつ、自分に特別支給年金を受け取る資格があるか確認してみましょう。
計算方法
特別支給年金の計算式では、厚生年金への加入期間が2003年3月以前と2003年4月以降の2種類あります。2003年3月以前の場合は、加入期間中の「平均標準報酬月額」の総額×0.007125で計算可能です。
例えば、厚生年金保険への加入期間が2003年3月以前で「平均標準報酬月額」が20万円×60ヶ月だった場合、計算すると8万5,500円です。また2003年4月以降は、加入期間中の「標準報酬月額」と「標準賞与額」の総額×0.005481で計算する必要があります。
厚生年金保険への加入期間が2003年4月以降で「標準報酬月額」と「標準賞与額」の総額が20万円×60ヶ月だった場合、65,772円です。上記の計算式を活用し、受給できる特別支給年金を計算しましょう。
特別支給の老齢厚生年金は減額されるケース
どのようなケースで特別支給の老齢厚生年金は減額されるのでしょうか。特別支給の老齢厚生年金が減額されるときは、社会保険に加入した月と標準報酬月額が変動していた月です。社会保険への加入した当初の月の総報酬額と基本月額の合計金額が28万円を超える場合、社会保険に加入した当初から特別支給年金が減額されます。
また標準報酬月額が変動していた月では変動と同時に総報酬月額相当額も変わるため、特別支給年金が減額されるかもしれません。標準報酬月額は、算定基礎届と随時改定によって変動します。
算定基礎届とは、毎月7月に提出して9月からの標準報酬月額が決定します。一方で随時改定は給与変動してから3ヶ月が経過すると、標準報酬月額が変動可能です。老齢厚生年金が減額されるケースを把握したうえで、受給手続きを行いましょう。
特別支給の老齢厚生年金を受給するための手続き
特別支給年金を受給するためには、どのような手続きをすればよいのでしょうか。特別支給の老齢厚生年金を受給するための手続きは、以下のとおりです。
- 受給開始年齢に到達する3ヶ月前に日本年金機構から事前送付用が郵送される
- 受給開始年齢になったら市区町村で住民票の交付を受ける
- 年金事務所もしくは年金相談センターにて金融機関の通帳のコピーを提出する
もし、特別支給年金の受給権があるのに年金の請求をしない方は65歳になる3ヶ月前に再度年金の請求書が届き、未請求分は請求すれば一括で受給可能です。しかし、特別支給年金の対象月から5年が経過してしまうと時効になって受け取れなくなるため、注意が必要です。
なお、特別支給年金から老齢厚生年金に自動的に切り替わるわけではありません。切り替えたい場合は手続きを行いましょう。
特別支給の老齢厚生年金に関する注意点
特別支給の老齢厚生年金を受給する際に、何に気をつけるべきか悩んでいる方も多いでしょう。
特別支給の減額する金額や手続きに関して把握したとしても、何に気をつければよいかを理解しなければ誤った解釈をしてしまうかもしれません。ここでは、特別支給の老齢厚生年金に関する注意点を3つ紹介します。
- 繰り上げ受給ができない
- 生活資金を確保するための行動をする
- 雇用保険の基本手当と一緒に受給できない
特別支給年金の注意点を把握しておけば、安心して受給手続きがしやすくなります。それぞれの注意点を参考にしつつ、特別支給年金の受給申請をしてみましょう。
繰り下げ受給ができない
特別支給の老齢厚生年金は、繰り下げ受給ができません。繰り下げ受給とは、年金の受給時期を繰り下げて66歳〜75歳までに増額したお金を受給できる制度です。
繰り下げ受給では、1ヶ月受け取りを遅らせるごとに0.7%金額が増額する制度です。例えば、老齢厚生年金で受給できるお金が20万円だったと仮定すると、受け取りを1ヶ月遅らせるだけで1,400円を追加で受給できます。
しかし、特別支給年金には繰り下げ受給はないため、受け取り時期を遅らせるメリットがありません。受け取り時期を遅らせて5年が経過すると、特別支給の年金が受給できなくなる恐れがあります。そのため、特別支給の年金は早めの受給を心がけましょう。
生活資金を確保するための行動をする
特別支給の老齢厚生年金の受給対象外だった方は、生活資金を確保するための行動をしましょう。2025年現在60歳未満の方は特別支給の年金の受給対象外で、公的年金の受給開始は65歳です。
もし、フルタイムの仕事を60歳定年で終わらせたい場合、5年間の生活資金を確保するための行動をしなければなりません。生活資金を確保するための具体的な手順は、以下のとおりです。
- 収入と支出および資産と負債の現状を整理して把握
- 「収入を増やす」「支出を減らす」、「資産運用をする」3つの行動をリストアップ
- リストアップした項目に対する優先順位とスケジュールを決定して着手
上記の手順を参考にし、公的年金を受給するまでの期間の生活設計を立てましょう。
雇用保険の基本手当と一緒に受給できない
特別支給年金は、雇用保険と一緒に受給できません。雇用保険とは、失業して求職中の方を支える制度です。一方で老齢厚生年金は、仕事をリタイアした方を支えるための制度となっています。
老齢厚生年金と雇用保険では制度の目的が異なっているため、一緒の受給は不可能です。もし、特別支給の受給者がハローワークで求職申請すると、翌月から基本手当の受給が終了するまで特別支給の受給が停止します。
両方の受給資格を満たしている方は、受け取る金額と求職の必要性などを総合的に判断したうえで、受給すべきお金を選択する必要があります。
まとめ
特別支給年金を受給できない方は、一定条件を満たせば受給できます。
ただ、老齢厚生年金には繰り下げ受給ができない点、雇用保険の基本手当を一緒に受給できない点を事前に把握しておきましょう。
特別支給年金をもらえない方は本記事を参考にし、どのような対策をしたら受給できるかを確認しておくのがおすすめです。シニア求人サイト【PR市場】では、60歳以上の方を対象にした求人が掲載されています。
特別支給年金を受給できたとしても、経済的に困窮している方がいるかもしれません。経済的に困窮している方は、シニア求人サイトを活用して自分に合った職場選びをするとよいでしょう。
シニア求人サイトを活用すれば、60歳以上の方の人手を求めている企業を見つけられるため、通常の求人サイトと比較して採用されやすいです。シニア求人サイト【PR市場】を活用し、自分に合った職場を探して生計を立てましょう。
【Q&A】
Q1.個人事業主には特別支給の老齢厚生年金の収入制限が適応される?
A1.個人事業主には、収入制限が適用されません。特別支給年金は、厚生年金の受給経験がある方が受給できる制度です。つまり、厚生年金保険を支払った経験のない個人事業主は収入制限がありません。
Q2.厚生年金脱退時に比例報酬部分を受給できる場合の手続きは必要?
A2.厚生年金加入者が退職して収入制限なく働いたとしても、請求手続きができます。