年金受給者のアルバイトはいくらまでなら非課税?損しない方法を解説

公開:2024/05/23 更新:2024/05/23
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65歳を超えて、年金の受給が始まっても働きたい方が増えており、年金だけでは老後の資金が足りるか不安な方も多いでしょう。

年金を受給しながらアルバイトをすることは可能です。しかし、年金とアルバイトの収入が一定額を超えると住民税や所得税などの税金を支払わないとならない場合があります。

そこでこの記事では、年金受給者がアルバイトとして働くときに、いくらまでなら非課税となるのかを解説します。お金を損しないための方法についても紹介しますので、ぜひご覧ください。

年金受給者が非課税となる所得金額


年金受給者がアルバイトで一定金額以上の収入を得た場合、所得税や住民税の納付が必要です。

結論からお伝えすると、所得税については給与所得が103万円以下、住民税については地域ごとに設けられた住民税非課税限度額以下であれば税金がかかりません。

年金を受給しながらアルバイトをする場合、年金収入は雑所得、アルバイト収入は給与所得となります。課税される所得金額は、それぞれの収入から経費となる所得控除などを引くと計算が可能です。以下で、所得税・住民税の計算方法について詳しく解説します。

所得税

年金と給与(アルバイト収入)の2つの収入がある場合は、それぞれについて所得金額を計算する必要があります。

まず年金収入については、所得税を計算する際に経費として「公的年金等控除額」を収入から引くことが可能です。この金額は、65歳以上の方だと110万円です。

例えば老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた年金収入が100万円である場合、公的年金等控除額の110万円を引くと所得は0円となります。そのため、年金から所得税は引かれません。

一方アルバイト収入は給与所得となり、年間103万円を超えてしまうと原則として給与から税金が天引きされます。103万円は給与所得控除額55万円と基礎控除額48万円を合わせた金額で、この2つを収入から引いて所得税を計算します。例えば年間のアルバイト収入が70万円だった場合は、103万円を超えていないため所得税の納付は必要ありません。

住民税

住民税には所得割と均等割の2種類があります。所得割とは、住民税のうち所得額に応じて課税される部分です。一方均等割とは、住民税のうち所得に関係なく課税される部分で、自治体によって異なるものの基本的には都道府県民税が1,500円、市区町村民税が3,500円です。

住民税が非課税となるのは「所得割と均等割の両方が非課税になるパターン」と「所得割のみ非課税になるパターン」があります。要件は自治体によって多少異なるものの、例えば大阪市の場合は以下の通りです。

【所得割と均等割の両方が非課税になる要件】

  • 生活保護法の規定による生活扶助を受けている方
  • 障がい者・未成年者・寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合、年収2,043,999円以下)である方
  • 前年の合計所得金額が、次の算式で求めた額以下である方
    (1)同一生計配偶者または扶養親族がいる場合
     35万円 × (本人 + 同一生計配偶者+扶養親族)の人数+ 21万円 + 10万円
    (2)同一生計配偶者および扶養親族がいない場合
     35万円 + 10万円(給与所得者の場合、年収100万円以下である方が該当します。)

また、所得割のみの非課税限度額は45万円です。

仮に大阪市にひとりで住んでいて年金収入が100万円の場合、公的年金等控除額110万円の適用後は所得が0円となるため、年金収入に住民税はかかりません。同じくアルバイト年収が仮に70万円の場合、給与所得控除55万円+住民税の非課税限度額45万円を引いた金額は0となるため、住民税は非課税です。

年金受給者がアルバイトをするときに気をつけたい制度


年金受給者がアルバイトをする場合、気をつけなければいけないのは「在職老齢年金制度」の存在です。60歳を過ぎたあと、働きながら厚生年金に加入して受け取る老齢厚生年金は「在職老齢年金」と呼ばれます。

在職老齢年金制度では、アルバイトの収入と老齢厚生年金の月額合計が47万円以上に達すると、老齢厚生年金の一部またはすべてが支給停止されます。

年金が支給されるアルバイト収入の金額


年金が支給停止されないように働くためには、アルバイトの収入と老齢厚生年金の合計額がいくらになるかを意識しておく必要があります。

月額50万円までであれば老齢厚生年金は全額支給されるため、50万円から年金を引いた金額がアルバイトでの収入の限度だと考えるとよいでしょう。以下の計算式で、年金の支給停止額を確認できます。

老齢厚生年金の支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)×1/2


また、厚生年金に加入せず働くことでも満額の年金を受け取れます。厚生年金への加入条件は以下の通りです。

  • 労働時間が週20時間以上
  • 1ヶ月の給与が88,000円以上
  • 学生ではない

これらの条件に当てはまらないよう働くのも一つの手といえるでしょう。もらえる年金を減らさないためにも気をつけておきたいポイントです。

年金受給者が扶養内で働きたいときに注意すべきこと


年金を受給しながらアルバイトをしたい方のなかには、家族の扶養内で働きたいと考えている方もいるでしょう。自分が家族の扶養に入っている場合、扶養内でアルバイトをすることは可能です。しかし、収入が一定額を超えると家族の扶養から外れてしまいます。

扶養家族となる条件

扶養親族の対象となる条件は以下の通りです。

  • 配偶者以外の親族である
  • 納税者と生計を一にしている
  • 1~12月の1年間の合計所得金額(年金や給与を合わせた金額)が48万円以下である

合計所得金額が48万円を超えると扶養から外れ、自分で税金や社会保険料を納める義務が発生します。

また、親族の社会保険に加入するには以下の条件を満たす必要があります。

  • 親族が社会保険に加入している
  • 年金受給者自身がアルバイト先で社会保険に加入していない
  • 年間の収入金額(年金と給与の合計)が180万円未満(60歳未満の場合は130万円未満)である
  • 被保険者の収入によって生計を維持している
  • アルバイト収入が扶養者の収入の2分の1未満である

扶養から外れると、家族の税負担が増す可能性もあります。扶養内で働きたい場合は年間の合計所得金額が一定額を超えないよう気をつけましょう。

年金受給者がアルバイトをしたときの確定申告


年金を受給しながらアルバイトをした場合、気になるのが確定申告の必要性でしょう。自分は確定申告をしたほうがいいのか、不安になる方も多いかもしれません。

ここでは、確定申告の条件などについて解説します。

確定申告の必要がない条件

確定申告の必要がない条件は以下の通りです。

  • 公的年金等(老齢基礎年金・老齢厚生年金・企業年金・恩給など)の収入金額の合計額が400万円以下、かつこれらの公的年金等のすべてが源泉徴収の対象になっている
  • 公的年金等以外の所得金額(給与所得・一時所得・不動産所得・株式などの譲渡所得・公的年金等以外の雑所得など)の合計額が20万円以下である

これらの条件に当てはまっている場合は、確定申告の必要はありません。公的年金の収入の合計は、「公的年金等の源泉徴収票」で確認できます。

所得が年間20万円を超えていれば確定申告が必要

先述した2つの条件に当てはまらなければ、確定申告が必要です。例えば年金の合計額が400万円以下であっても、そのほかの所得が年間20万円を超えていれば確定申告の対象です。

確定申告をする際は、源泉徴収票など申告書の作成に必要なものをあらかじめ準備しておきましょう。手続きは税務署や確定申告会場でできるほか、郵送やインターネット上でも可能です。

確定申告をする期間は、申告対象の年の翌年2月16日〜3月15日までと決められています。期間内に手続きできるよう、早めに対応しておきましょう。また、住宅ローンを返済している・年間10万円を超える医療費を支払ったなどの場合は、確定申告書を提出すると所得税の還付を受けられる場合があります。

税務署の申告相談会や国税局の電話相談センターなどの相談窓口もあるため、確定申告が必要なのかどうか心配な場合は問い合わせてみるとよいでしょう。

年金受給者が非課税で働くためのポイント


ここまで紹介してきたように、非課税で働くためには収入額などさまざまな条件をクリアする。ここでは、年金受給者が非課税で働くためのポイントについて解説します。

年間の給与収入を103万円以内にする

年間の給与収入が103万円を超えると、所得税が課税されます。非課税で働き続けるためには、アルバイトでの収入が103万円を超えないよう勤務時間や勤務日数を調整するとよいでしょう。

合計所得金額を「住民税の均等割の非課税限度額」以下に抑える

住民税の非課税限度額以上の所得があると、住民税が課税されます。非課税限度額は住んでいる場所によって異なるため、市区役所や町村役場などに問い合わせるのが確実です。

働き方を工夫する

非課税の範囲内で働くためには、収入をある程度コントロールする必要があります。そのため、シフトの調整がしやすいアルバイトを選ぶのもよいでしょう。短期間や単発のアルバイトを探すのも一つの手です。

また、個人事業主なら給与所得者ではないため、所得税が発生する基準は基礎控除額である48万円です。収入から経費や青色申告特別控除等の所得控除を差し引いた金額が所得となるため、働き方によっては48万円以内に抑えられる可能性もあります。

まとめ


年金受給者が非課税で働くためには、課税されるボーダーラインを意識することが重要です。勤務日数や時間の調整がしやすいアルバイトを選べば、年金を受給しながら収入を上乗せすることが可能でしょう。

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【Q&A】

Q1:年金を受給しながらアルバイトをするときに気をつけることは?

A1:アルバイトをする際は、給与が50万円から年金受給額を引いた金額を超えないよう気をつけるとよいでしょう。在職老齢年金制度では、アルバイトの賃金と老齢厚生年金の月額合計が50万円以上に達すると、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となるためです。



Q2:年金受給者が非課税で働くにはどうすればいい?

A2:アルバイトで得る所得金額が非課税の範囲に収まるようにしましょう。所得税については給与所得が103万円以下、住民税については地域ごとに設けられた住民税非課税限度額以下であれば税金がかかりません。住民税の非課税限度額については住んでいる自治体に問い合わせるか、ホームページなどで確認してみましょう。


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