パートの社会保険「月68000円」はいつから?シニアの影響も解説

公開:2024/11/29 更新:2024/11/30
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パートやアルバイトの社会保険加入条件が月収68,000円以上に引き下げられるとの話題がありました。しかし、2024年11月現在で正式な発表はありません。いまのところ、パートタイムで働く方の社会保険加入の条件は、所定内賃金が月額88,000円以上と定められています。ただし、加入条件の拡大は段階的に進んでおり、今後の動向が気になるところです。


この記事では、パートの社会保険の加入条件や加入するメリット、デメリットを紹介します。特に年金を受給しながら働くシニアの皆様への影響についても詳しく解説しますので、ご自身のライフプランに合った働き方を選ぶ際の参考にしてください。


【2024年10月以降】パート・アルバイトの社会保険加入条件


2024年10月から、パートタイマーやアルバイトの社会保険加入条件が拡大されました。以下の5つの条件をすべて満たす方は、原則として社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が必要です。


  • 従業員数が51人以上の企業で働いている
  • 契約上の労働時間が20時間以上ある
  • 所定内賃金が月額88,000円以上
  • 2ヶ月を超えて働く見込みがある
  • 学生ではない

それぞれの条件を詳しく解説します。


従業員数が51人以上の企業で働いている

2024年10月から、従業員数が51人以上の企業で働くパートやアルバイトの方が新たに社会保険の適用対象になりました。従業員数とは、厚生年金に加入している従業員の人数です。


従業員数のカウント方法については、以下のように定められています。





従業員数は、上記の「A + B」で計算され、パートやアルバイトも含まれます。

また、従業員数が50人以下の企業であっても、企業と従業員が合意すれば、51人以上の企業と同じ社会保険の加入条件を適用できます。

契約上の労働時間が20時間以上ある

週の所定労働時間が20時間※以上のパート、アルバイトの方も社会保険の対象になりました。週の所定労働時間とは、雇用契約や勤務規則で定められた1週間の就業時間です。実際の勤務時間とは異なり残業は含まれません。

ただし、契約上で週20時間に満たない場合でも実際に2ヶ月連続で週20時間以上働いて、今後も続く見込みがあれば、3ヶ月目から社会保険の加入対象です。

※フルタイムで働く従業員の週所定労働時間が40時間の企業の場合

所定内賃金が月額88,000円以上ある


所定内賃金が月額88,000円以上の方は、社会保険の加入対象です。所定内賃金とは、基本給と手当の一部の合計額で、以下のような残業代や賞与、通勤手当などは含まれません。

  • 賞与:給与とは別に支給される臨時的な報酬
  • 割増賃金など:時間外や休日、深夜に働いた場合に追加で支払われる賃金
  • 精皆勤手当、通勤手当、家族手当など
このように変動しやすい手当や賞与などは含まれず、安定的な収入を基準に判断されます。

2ヶ月を超えて働く見込みがある


2ヶ月を超えて雇用される見込みがある場合は、社会保険の加入対象です。たとえ最初の雇用契約が2ヶ月以内であっても、契約更新が見込まれている場合は加入対象に当てはまります。

また、同じ事業所で同じ雇用形態のまま契約が更新され、継続して雇用されている実績がある場合も加入対象です。

学生ではない


学生は社会保険の対象ではありません。ただし、休学中の学生や定時制(夜間学校)、通信制の学生は加入対象です。また、学校を卒業する前に就職した場合や、卒業後も同じ企業で引き続き働く場合も社会保険の対象です。

社会保険に加入するメリット


社会保険は、生活の安定を支える重要な制度です。会社員やパートタイムで働く方が加入すると、老後の年金額が増えるだけでなく、病気やけが、さらには家族への保障も充実します。また、保険料の一部を企業が負担するため、自己負担を軽減できる点も大きな魅力です。

  • 将来受け取る年金額が増える
  • 充実した保障が受けられる
  • 社会保険料の半分は会社が負担してくれる
ここでは、社会保険の加入で得られる上記3つのメリットについて、分かりやすく解説していきます。

将来受け取る年金額が増える


社会保険に加入する一番のメリットは、将来受け取る年金額が増えることです。

公的年金には、全員が加入する「国民年金」と、会社員などが加入する「厚生年金」の2種類があります。家族の扶養に入っている方や、自営業の方は国民年金だけに加入していますが、厚生年金に加入すると国民年金にプラスして厚生年金も受け取れます。

【年金制度の仕組み】


例えば、厚生年金保険に20年間加入し、毎月約8,100円の保険料を納めた場合では、将来受け取れる年金額は毎年106,800円増えます。(※1)



充実した保証や手当が受けられる


社会保険に加入すると、さまざまな保障や手当を受けられるようになります。病気やケガなどの予期せぬ事態にも手厚いサポートが得られます。

傷病手当金・出産手当金では、病気やけが、または出産などで働けなくなった場合に、給与の3分の2に相当する傷病手当金や出産手当金が支給が可能です。

障害厚生年金・遺族厚生年金であれば、厚生年金保険の加入期間中に障害がある状態になった場合は、国民年金の「障害基礎年金」に加えて「障害厚生年金」も受け取れます。障害基礎年金は、障害等級1級または2級の場合に支給されますが、障害厚生年金の場合は障害等級3級も支給対象です。

また、万が一亡くなった場合も、遺族には「遺族基礎年金」に加えて「遺族厚生年金」が支給されるため、家族の生活の支えになるでしょう。

社会保険料の半分は会社が負担してくれる


厚生年金保険や健康保険に加入した場合、保険料の半分は会社が負担してくれます。また、従業員が40歳以上65歳未満の場合には、健康保険料と併せて介護保険料も徴収されます。この介護保険料についても、会社と従業員で半分ずつ負担する仕組みです。

一方で、国民年金や国民健康保険に加入している場合は、保険料を全額自己負担しなければなりません。そのため、現在、国民年金に加入している方が厚生年金に加入すると、保険料負担が軽くなる可能性があります。

特にシニア世代で配偶者が定年退職している場合は扶養に入れないため、国民健康保険と国民年金の保険料を全額自己負担する必要があります。しかし、パート先で社会保険に加入すれば、保険料は企業と折半されるため、保険料の負担が軽くなるかもしれません。

社会保険に加入するデメリット


社会保険に加入すると、さまざまなメリットがある一方で、デメリットもあります。

  • 手取りが減るケースがある
  • 扶養を外れる手続きが必要
それぞれ解説します。

手取りが減るケースがある


社会保険に加入すると、毎月の保険料が給与から引かれるため、手取り額が減少する場合があります。特に扶養内で働いていたパートやアルバイトの方にとっては、これまでの金額と比べて手取りが減るためデメリットと感じるかもしれません。保険料は厚生年金保険と健康保険を合わせて収入の15%前後です。

参考:

扶養を外れる手続きが必要


厚生年金保険や健康保険に新しく加入する場合は、勤務先が手続きを進めてくれるので特別な準備は必要ありません。ただし、それまで加入していた国民健康保険や、配偶者の扶養から外れる手続きは自分でする必要があります

国民健康保険は市区町村役所で、扶養削除は配偶者の勤務先で手続きします。手続きが遅れると保険料が二重に請求されるケースもあるため、早めに対応しておきましょう。

扶養範囲内で働く「年収の壁」とは?


年収の壁とは、税金や社会保険料が発生し、手取りが減ってしまう年収のボーダーラインです。年収の壁には「税制上の壁」と「社会保険上の壁」があります。一覧表でまとめました。



税制上の年収の壁は、税金が発生するかどうかの目安となる金額です。この金額を超えると、所得税や住民税がかかる場合があります。一方、社会保険上の年収の壁は、社会保険料を負担するかどうかを決める基準額です。超えると扶養から外れ、自分で社会保険料を支払わなければなりません。

シニア世代が社会保険に加入する際は在職老齢年金に注意


在職老齢年金は、60歳以上の方が厚生年金に加入してもなお認められる年金です。しかし、収入や年齢によっては受け取れる年金額が減額されたり、全額支給停止になったりする場合があるので注意が必要です。

【令和6年度の在職老齢年金の計算方法】

引用:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」


令和4年3月以前、60〜65歳未満の方に適用された在職老齢年金の計算式は、現在よりも厳しい基準が設定されていました。計算式は以下の通りです。


令和4年3月以前に60〜65歳だった方が、働きながら厚生年金を受け取っていた場合、当時の計算方法で年金額が調整されていました。しかし、令和4年4月から在職老齢年金の計算方法が変更され、基準額や減額ルールが現在の仕組みに変わりました。 そのため、令和4年3月以前に支給を受けていた方は旧ルールが適用され、令和4年4月以降に支給を受け始めた方とは計算方法や調整額が異なります。 制度変更の影響を受けた場合は、自分の年金計算にどのルールが適用されるのかを確認しましょう。詳細については日本年金機構などにお問い合わせください。

社会保険に加入したくない場合の対処法


社会保険に加入したくない場合は、勤務先に相談して、シフトや勤務時間などを調整してもらいましょう。例えば、月の賃金を88,000円未満に抑えたり、週の労働時間を20時間未満に調整してもらったりすれば社会保険の加入条件を満たさない範囲で働けます。


ただし、このような選択は、将来の年金額や医療保障に影響を及ぼす可能性があります。短期的な負担軽減と長期的な影響を比較し、慎重に検討しましょう。


まとめ


パートの社会保険加入条件が、月68,000円の基準はまだ正式には決定していません。しかし、加入条件が年々拡大しているのは事実です。社会保険への加入は、手取りが減るためデメリットと感じる方もいます。一方で年金の受給額が増えたり、医療や介護の手厚い保障を受けられたりと、長期的なメリットも多い制度です。


現在パートで働いている方は、この機会に扶養内で働き続けるか、社会保険に加入して将来の保障を充実させるか、ご自分のライフプランを見直してはいかがでしょうか?また、お仕事探しを検討中の方は、シニア世代に特化した求人サイト「PR市場」をぜひご活用ください。


【Q&A】

Q1.パートやアルバイトの社会保険加入条件が68,000円になるのはいつから?

A1:パートやアルバイトの社会保険加入条件として、月収68,000円以上に引き下げられるとの話題がありました。しかし、2024年11月現在、正式な発表はありません。 現行の加入条件は、月収88,000円以上となっています。ただし、社会保険の適用範囲は年々拡大しており、今後も変更の可能性があります。


Q2.ダブルワークで両方とも週20時間未満の勤務の場合は、社会保険に入らなくてもよい?

A2:ダブルワークで両方の勤務先の週の所定労働時間が20時間未満の場合、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入義務はありません。ただし、合計の年収が130万円を超えると、配偶者の社会保険の扶養対象外になります。自分で勤務先の社会保険や国民健康保険に加入しなければなりません。

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