シニア世代の転職で重要!シニアインターンシップ制度について解説

公開:2024/08/30 更新:2024/08/30
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シニア世代(一般的には60歳以上)の転職活動で、転職前に業務内容を知っておくと認識の違いがなく、長く活動できます。インターンシップ制度は、応募者が入社前に業務体験や内容を知ることができる重要な制度です。


実はこのインターンシップ制度はシニア世代にも導入されているのをご存じでしょうか?この記事では、シニアインターンについて解説しています。興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。


シニアインターンについて


特定の職の経験を積むために、企業や組織において労働に従事している期間をインターンと呼びます。シニアインターンは、50〜60代の方が行うインターン活動を指しています。高齢社会で、働く意欲のある高齢者が増加傾向にあり、そのようなシニア世代の方々が企業などにマッチングする機会として、シニアインターンを実施する企業も増加中です。


シニアインターンは、転職や再就職を検討しているシニア世代にとって、非常に重要なイベントです。入社前にその企業の業務内容や仕事の仕方を知ることで、入社後に印象の相違がなくなり、余計なストレスなく仕事を続けられます。


シニアインターン導入までの流れ


シニアインターンが増加したのは高齢社会となり、若い働き手の減少と働きたい高齢者の増加が背景にあります。全労働人口の半数以上が40〜60代となってきている日本では、年齢ではなくスキルで人材採用をする傾向がみられます。


スキルで人材を採用しようとするなかで、シニアインターンには次の3つの目的があり、現在は導入する企業が増えています。


  • 増加する働くシニア世代
  • 重要なシニア人材の採用率向上
  • 入社後のギャップ解消


令和3年4月より高年齢者の雇用状況は定年を70歳まで引き上げ、働ける期間が延びてシニア世代の求人が多くなりました。こういった背景もあり、現在では多くの企業や地方自治体が、シニア世代の人材を確保するため導入を進めています。


増加する働くシニア世代

日本の平均寿命が延びて人生100年時代とも言われています。


年々働く世代は年齢層をあげていき、最近の雇用では65歳から70歳まで雇用定年を伸ばしました。経済的または自身の趣味や健康のため、仕事を続けたいと考えるシニア世代も、雇用定年が延びたことで、転職や再就職へ積極的になりました。


しかし、働く意欲の高いシニア世代が増加している一方で、選考から漏れるシニア人材もいます。


65〜69歳の65%いる働きたい方々に対し、46.6%しか就業しておらず、20%もシニアが溢れている事実があります。


残りの20%の人材は、人手不足の業界では貴重な人材です。とあるIT業界の会社では、2020年より50代以上を積極的に採用しており、46人を雇用しました。


そのうち11人は60歳以上といった会社もあり、企業としてもシニア世代の人材採用に力を入れていれているのが分かります。


重要なシニア人材の採用率向上

シニアは、今まで培ってきた経験やコミュニケーション能力があるとされ、即戦力や新人の人材育成の観点から重要な人材として注目されています。


ソニーグループでは、ミドルからシニアを含む幅広い世代が活躍しています。そのなかで、50歳以上の社員へキャリア支援制度として「キャリア・カンバス・プログラム」といった制度を導入しており、社員の多様な挑戦へのサポートを実施中です。


支援制度にはシニアインターンも含まれており、ほかの職種や環境へ触れ、新たな興味や業務への新たな視点を発見するなどさまざまな意味があります。


人材派遣会社であるPASONA会社は「豊かな知識や経験を持つ中高年こそ活用すべき」と考える会社です。1980年頃から、シニアが積極的に活躍できるように、中高年専門の人材派遣会社であるエルダーマネジメントセンターを設立しています。


さらに、2018年には到来する高齢者の増加において、多くの経験を積んできた中高年のシニア世代がさらに活躍できるようにと、PASONAマスターズを設立しました。


高い専門知識と経験を持つシニアが、多くの企業に就業できるよう採用率が上がる取り組みを実施中です。


こうした取り組みにより、シニア世代のスキルもさらに需要が増えることで、企業や地方自治体などが重要な人材として、一層採用率が向上している状況も確認されています。


入社後のギャップ解消

再就職や転職を検討している方々は、希望している業務が自分に合っているか、継続できるかなどさまざまな問題について悩みます。自分の思っている業務内容と実際の業務内容が大きく違っているなどのギャップをなくすうえで、インターンシップ制度は非常に重要です。


令和2年に出された石川県の高齢者インターンシップに関する報告書によると、得られた効果にギャップの減少と、マッチング機会を増やす場などがありました。


さらに、開催形態として合同型と個別型それぞれの利点が明確になり、合同型は気軽に参加しやすく、個別型は求職者のミスマッチを防ぐのに適していました。


インターンシップは求職者側としては、「実際に現場に行ってどんな方が働いているのか分かる企業な場所」です。企業側としては「人材不足が続くなかで、業務について知ってもらえて、面接時や応募でのコミュニケーションでは取れなかった面を知ることができる」手段です。


上記の内容から、シニアインターンシップは求職者側と企業側双方のギャップを解消する重要な機会と言えます。

シニアインターンを実施している様子


大体の流れとしてはエントリーフォームより申込をすませ、説明会や事前面談を経てインターンが開始されます。


シニアインターンの実施は、希望企業のサイトや転職サイトなど求人情報や地方自治体の活動内容に紹介されています。


記載内容は「応募資格」「業務体験の内容」などです。業務体験の内容にはどのような業務体験ができるか、複数の選択肢が記載されている場合もあり、自身の選択する業務へ参加が可能です。


石川県の令和2年に行われた高齢者インターンシップの報告書では、最初にセミナー・マッチング交流会を実施し、就職支援セミナーや企業との交流会を開催しました。


その後、就職意欲の高いイベント参加者で、すぐ応募まで至らなかった方々に向けてインターンシップを開催しました。最終的な条件や仕事内容を確認してもらうことでミスマッチを解消し、フォローアップまで実施しています。


シニアインターンを通して自身の強みを生かすステップ


シニアインターンの活用で自身のキャリアを広げることが可能です。企業側としては、リストラ施策としてセカンドキャリア支援を導入している場合もあります。


このセカンドキャリア支援で行われているシニアインターンを活用すると、NPO法人や地方優良企業、スタートアップ企業へ向けたキャリア展開が可能です。


シニアインターンを通して、自身の強みをさらに生かすには、次の3ステップを踏むことで自身の市場価値が上がります。


  1. ミドル世代のキャリア形成
  2. 企業先での就業体験
  3. シニア世代と企業のマッチング


シニアインターンを最大限に活用するには、将来どのように働きたいかキャリア形成をしてから取り組むことです。


ミドル世代のキャリア形成

40代、もしくは30代からキャリアを伸ばすために幅広く時間をかけて取り組むステップです。いくつかのプログラムや業務などを無理なく自分らしいキャリアを積みます。


ミドル世代のキャリア形成の活動は、ほかの業務に専念している社員よりもリストラの対象にされにくくなります。


リストラから退職が決まった場合、短期間で自分に合った新たなキャリアを考える必要があります。


企業先での就業体験

お試しとして、ほかの事業へのインターンをすることで多くの発見があります。働いて初めて分かる相性などもあり、実際に業務に触れて確認するステップです。インターン制度であれば、合わない場合でも一定期間を過ぎれば元の業務に戻れる可能性があります。


企業側も試験的な状況なら業務参加のハードルが下がるため、さまざまな業務へのチャレンジがしやすいです。しかし、業務体験は、自身と業務のギャップを減らせる反面、合わない場合は諦めが肝心です。


シニア世代と企業のマッチング

シニア世代と企業がマッチングしやすくするには、強みを見える化する必要があります。業務への取り組み方や、周辺環境への適応などを第三者に分かりやすくすることで、企業が求める人材像とマッチングしやすいです。


見える化するためには、専門知識や技術、スキルの習得は必要となるためキャリア形成の段階で何を身に着けていくかはある程度決めておく必要があります。


マッチングもハードルは下がりますが、絶対ではないため見つからない場合もあります。


シニアインターンの導入と実施内容


現在では多くの企業がシニアインターンを実施しています。例えば、令和2年に石川県のインターン報告書として紹介されている業種は、介護福祉系、コンビニ店員、職業指導員、リネン仕上げや倉庫スタッフなどです。


上記の業種を経験し、業務内容を把握できたと参加者は感想を残しています。コンビニエンスストア業のシニアインターンでは、レジ打ちに関する思い違いや、ほかのシニアスタッフの動画をみてイメージが持てたなどの意見もありました。


物流業のシニアインターンでは、想像していたよりシニアの方が多くて安心できたと参加者の感想もあります。


シニアインターンがどのような流れなのか、実際のシステムコンサルティング会社を参考に紹介します。


  1. 50~68歳の方、募集コースに該当した業務経験をお持ちの方
  2. 任意の平日8時間で時給2,000円
  3. 募集コース:広報・営業・法務・新規事業開発・品質管理・エンジニア育成・開発者


上記の内容は、実際に募集されていたシニアインターンの掲載内容です。募集は、インターネットでの掲載もされているので、転職希望先で導入されているかチェックしてみましょう。


シニアインターンを通して


シニア世代で転職活動をしている方々にとって、シニアインターンは転職希望先の不安を解消できる貴重な制度で、企業側としても重要な意味を持ちます。


企業側はシニアインターンを通して、応募してきたシニアに6つのスキルがあるか確認しています。そのスキルとは以下の6つです。


  1. 経験
  2. 専門性
  3. リーダーシップ
  4. 育成力
  5. 調整力
  6. 人脈


業務経験から即戦力をほしがる以外にも、業務に関する能力で秀でた部分があるか調べています。


例えば、職員間でのコミュニケーション能力や新人社員の育成能力、緊急時の対応といった能力があるかどうかもシニアインターンを通して確認しています。


実際の例として、シニアを採用したことで育児中の女性社員の離職防止につながった話がありました。


単純な業務スキルだけではなく、今までの経験から予想しなかった場面で実力を発揮するシニア世代もいます。


シニアインターンは、実際の業務に触れることで色々な能力を見極める機会でもあります。



シニアインターンを利用して、企業へ自身をアピールするには業務スキル以外も示すのも重要です。


実際の業務中に発生した問題に対処するなど、問題への対処能力などスキルを示すことで、企業によっては有力な人材として積極的に採用されます。


人材不足の企業とマッチングする取り組みのなかで、シニアインターンを実施しました。その結果、新規事業や新規顧客取り込み、緊急性が低くDX重要度が高い事業では、通常よりも需要が高いと判明しました。こういった結果も、実際にシニアインターンの実施から判明した結果です。


まとめ


シニアインターンは、転職や再就職などで業務に対する不安や、実際に働いてみての実感など多くの情報を入手できる貴重な制度です。


また、自身のスキルを示すことで採用に対するハードルを下げられるチャンスです。


今後、将来を考えたキャリア形成を検討しているミドル世代は、セカンドキャリアとして企業先での就業体験を行うことでシニア世代で転職に有利です。


シニア世代では、就業経験が豊富であれば、その分経験を生かして業務に参加してほしいと、多くの企業とマッチングしやすくなります。


しかし、実際に導入される企業は多くなく、求人情報にシニアインターンについて記載は少ないです。


シニアインターンを利用したい方は、PR市場などシニア求人サイトなどを活用し、導入している企業を探すのも、満足いく転職手段の一つだと思います。



【Q&A】

Q.シニアインターンとは、どのようなものですか?

A.シニアインターンとは、60代以上のシニア世代に向けた就業体験を指しています。


Q.シニアインターンは、どのような場所で行われていますか?

A.企業が独自に行っている場合もあれば、地方自治体の取り組みとして開催されているものもあります。インターネットや広告で開催日時や場所などをメモしておくとよいでしょう。


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