60歳で再雇用されたときの給与の相場は?収入を増やす方法も紹介
60歳を迎えて定年退職をしても、安定した生活のために再雇用で働き続けたいと考える方は多いでしょう。
実際働くにあたって、再雇用の給与相場はどれくらいなのか気になりますよね。再雇用の場合、給与は定年前より少なくなることが多いですが、公的な手当や給付金など収入減を補う方法はいくつか存在しています。
そこでこの記事では、再雇用の給与の相場や給付金の申請方法などについてご紹介します。
60歳を過ぎて再雇用されたときの給与相場は?
60歳で再雇用されて働く場合、自分が受け取っている給与は相場とどれくらい差があるのか気になる方も多いでしょう。
60歳を過ぎて再雇用された場合、再雇用前と比べて給与の少なくなる可能性があります。では、再雇用の給与実態はどのようになっているのでしょうか。国税庁の「民間給与実態統計調査」から、60歳以上の給与相場についてみていきます。
60歳以上の平均給与
まず、60歳以上の平均給与をみてみましょう。国税庁の「令和4年民間給与実態統計調査」によると以下のようになっています。
男性 | 女性 | 男女平均 | |
---|---|---|---|
55~59歳 | 702万円 | 329万円 | 549万円 |
60~64歳 | 569万円 | 267万円 | 441万円 |
65~69歳 | 428万円 | 227万円 | 342万円 |
70歳以上 | 367万円 | 211万円 | 298万円 |
55~59歳の平均給与と比べると60歳以上では全体的に平均給与が減少しているのがわかります。
事業所規模別にみる60歳以上の平均給与
次に、1年を通じて勤務した給与所得者を対象として、男女を合わせた平均給与を事業所の規模別にみてみましょう。「令和4年民間給与実態統計調査」の結果は以下の通りです。
10人未満 | 10人以上 | 100人以上 | 1000人以上 | |
---|---|---|---|---|
55~59歳 | 428万円 | 494万円 | 532万円 | 632万円 |
60~64歳 | 432万円 | 455万円 | 421万円 | 461万円 |
65~69歳 | 350万円 | 404万円 | 329万円 | 320万円 |
70歳以上 | 272万円 | 362万円 | 275万円 | 227万円 |
10人未満の事業所では60〜64歳の平均給与が最も高くなっていますが、それ以外のほとんどの事業所規模では55〜59歳の平均給与が最も高くなっているようです。
また、事業所規模が大きくなるにつれて、60歳以降の給与の減少幅が大きいことも読み取れます。
業種別にみる60歳以上の平均給与
続いて、同じく「令和4年民間給与実態統計調査」から、業種別に60歳以上の平均給与をみてみましょう。
60~64歳 | 65~69歳 | 70歳以上 | |
---|---|---|---|
情報通信業 | 659万円 | 574万円 | 808万円 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 602万円 | 777万円 | 310万円 |
宿泊業・飲食サービス業 | 280万円 | 185万円 | 166万円 |
農林水産・鉱業 | 319万円 | 268万円 | 243万円 |
サービス業 | 400万円 | 257万円 | 208万円 |
60~64歳と70歳以上では、情報通信業の平均給与が最も高くなっています。65~69歳で最も高いのは、電気・ガス・熱供給・水道業です。
一方、60歳以上の年代すべてで最も平均給与が低いのは宿泊業・飲食サービス業となっています。そのほかにも農林水産・鉱業やサービス業は平均給与が比較的低いようです。
再雇用制度とは
再雇用制度とは、高年齢者雇用安定法第9条に基づいた「継続雇用制度」の一つです。
雇用する65歳までの高齢者に安定した雇用を確保するため、希望があれば定年後も引き続いて雇用できます。定年年齢を65歳未満に定めている事業主は、定年の引上げや継続雇用制度の導入、定年の廃止などの措置が必要とされています。
再雇用のメリット
再雇用のメリットは、これまでと同じ環境で安定して仕事をしながら、ある程度の収入を確保できることです。
再雇用される前と同じ仕事内容であれば、これまでの経験やスキルを活かしながら働き続けられるでしょう。経験豊富な人材に引き続き勤務してもらえるのは、企業にとってもメリットが大きいといえます。
再雇用の注意点
再雇用のメリットがある一方、再雇用には注意点もあります。まず、定年後に再雇用される場合、雇用形態はパートや嘱託社員となることがほとんどです。そのため、同じ職場であっても給与が以前よりも下がる可能性が高いでしょう。
また、仕事内容が同じだとしても、以前と同じ役職に就けるとは限りません。仕事内容が変化し、モチベーションが下がることも考えられます。
60歳以上の就業率
そもそも、60歳以上の就業率はどの程度なのでしょうか。
「令和5年版高齢社会白書」によると、高齢者の就業率は60~64歳で73.0%、65~69歳で50.8%、70~74歳で33.5%です。男性は60代後半でも全体の半数以上が働いており、75歳以上でも11.0%の方が何らかの仕事に就いています。
また、働けるうちはいつまでも働きたいと考えている60歳以上の方は約4割いるとされています。以上のことからも、定年後も働き続けたいと考えるのは、もはや珍しいことではなくなっているといえるでしょう。
高年齢継続給付制度とは?
再雇用は定年前と同じ環境で働き続けられる点が魅力ですが、先述したように収入は以前よりもダウンするのが一般的です。収入減となると今後の生活への不安を感じることもあるでしょう。
再雇用で収入が減ってしまったとき、それを補ってくれるのが「高年齢雇用継続給付」という雇用保険の支援制度です。給付金は2種類あり、それぞれ条件を満たせば受給可能です。受給を希望する際は、在職中の事業所を管轄するハローワークに申請が必要となります。
2種類の給付金について、それぞれの条件等を解説します。
高年齢雇用継続基本給付金
「高年齢雇用継続基本給付金」は、基本手当を受給していない方を対象とする給付金です。受給の条件は以下の通りです。
- 60歳時点の賃金と比較して、60歳以後の賃金が60歳時点の75%未満となっている方
- 60歳以上65歳未満の一般被保険者かつ被保険者であった期間が5年以上あること
この給付金は、60歳に到達した月から65歳に達する月まで受給できます。
高年齢再就職給付金
「高年齢再就職給付金」は、基本手当を受給し60歳以後に再就職した方を対象とする給付金です。
再就職後に支払われる賃金が、基本手当の基準となった賃金の日額を30倍した額の75%未満となった方で、以下の5つの要件を満たした方が対象となります。
- 60歳以上65歳未満の一般被保険者である
- 基本手当の算定基礎期間が5年以上ある
- 再就職した日の前日時点での基本手当の支給残日数が100日以上ある
- 1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる安定した職業に就いた
- 再就職手当の支給を受けていない
要件に当てはまる場合は、事業所の所在地を管轄するハローワークで、受給資格確認の手続きが必要となります。
高年齢継続給付制度を利用するときの注意点
収入ダウンをカバーしてくれる高年齢継続給付制度には、申請するときに注意すべき点が4つあります。それぞれについてみていきましょう。
65歳未満が対象である
高年齢継続給付制度は60歳以上65歳未満が対象です。そのため、それ以外の年齢の方は対象外となります。
再就職手当との併給はできない
高年齢再就職給付金と再就職手当の併給はできません。両方とも対象となる場合は、どちらか一方のみを選択することになります。
育児休業給付または介護休業給付と併用できないことがある
月の初日から末日まで育児休業給付または介護休業給付の対象となる休業をした月は、高年齢雇用継続給付の支給対象月とはなりません。
月の一部だけが育児休業給付または介護休業給付の支給対象となる場合は併用が可能です。
在職老齢年金が支給停止となる場合がある
高年齢雇用継続給付の給付額に応じて、在職老齢年金の一部は支給が停止される場合があります。具体的な条件等については、最寄りの年金事務所へ問い合わせてみるとよいでしょう。
再雇用後の収入ダウンを補う給付金以外の方法
上記で紹介した以外にも安定した収入を得るための方法があります。ここでは3つの方法について紹介します。
スキルを活かして起業する
近年では、定年後に起業する「シニア起業」が注目されています。起業はこれまでに獲得してきたスキルや人脈を活かせるほか、年齢に関係なく働き続けられる点がメリットです。
ただ、起業にはまとまった資金や詳細な事業計画等が必要になります。老後に必要な資金をよく見極めて計画を立てることが大切です。
再雇用の仕事に加えて副業をする
短時間勤務などで再雇用の仕事に余裕がある場合は、ほかに副業をするのも一つの手です。これまでパソコン作業が多かった方ならデータ入力、家事が得意な方なら家事代行など、特技を活かせる副業を行うと収入アップにつながります。
より好条件の職場に転職をする
もし再雇用の給与に納得できない場合は、より好条件で働ける場所へ転職する方法もあります。正社員として登用されれば給与アップも見込めるうえ、新しい環境で心機一転して働けるでしょう。
また、再雇用は65歳までしか雇用が保証されませんが、再就職すれば65歳以降も引き続き働ける可能性があるのも大きなメリットです。
まとめ
60歳で再雇用された場合の給与相場は、定年前と比べて低くなることが少なくありません。ですが、給付金などの制度を活用すれば収入をある程度維持できるでしょう。副業や起業、再就職といった方法も踏まえながら、自分に合った働き方を探してみてください。
【Q&A】
Q1.再雇用と転職ならどちらを選ぶべき?
A1:再雇用と転職それぞれにメリットとデメリットがあるため、自分が何を最優先するかで選ぶとよいでしょう。再雇用は慣れた環境で仕事を続けられますが、収入が下がる可能性があります。一方転職は収入アップが期待できる反面、新しい環境に慣れるまではストレスが生じることも考えられます。
Q2.定年後の生活が経済的に不安なときはどうすればいい?
A2:収入を増やすために副業をするのも一つの手です。また、ファイナンシャルプランナーに相談するなど、家計やお金の使い方の見直しをしてみるのもよいでしょう。